
沢田英男
彫刻作品集 かたわらに 2021年
この作品集を眺めていると、心が静まっていくと同時に、背筋が伸びるような感覚にもなる。
彫刻家の沢田英男さんの作品集、『かたわらに』。ひっそりと佇むような人や動物などの、木彫りの彫刻。ただそこにいるだけでも──むしろそれゆえに、ということなのかもしれない──〈祈り〉のようだなと思う。
掲載されているほとんどの彫刻作品には、はっきりと感情を指し示すような表情はなく、また個別性を表す記号もない。それぞれの作品にタイトルのような名前もつけられていない。
多くを語らない、寡黙で、匿名的な世界だからこそ、広く受け入れられる空洞のような優しさもあるような気がする。
作品集に寄せられた文章によれば、沢田さんは、東京藝術大学で彫刻を学び、その後、ドイツに留学。小さな木の彫刻を作るようになったのは、このドイツ時代にきっかけがあった。
ドイツにいた頃、展覧会に来た人が、「まるで靴屋で靴を買うように」彫刻を買ってくれた。その経験により、生活のなかで、手軽にかたわらに置いておけるもの、という思いが芽生え、小さな木の彫刻という形に進むようになる。
また、日本に帰国して以降、しばらく手ごたえがなかったなかで、アカデミックな教育をいったん忘れ、まっさらな状態から始めようと、自分の感性で木と向き合うようになった。
自らが木に積極的に働きかけることによって作品を作るというよりも、木そのものを感じることを通して自然と生まれるものを掬いとる、といった感覚だろうか。沢田さんは、力を抜くことを大事にするようになったと言う。
作った人型の彫刻なども、さらに引き算的に表現することによって、余白を引き立たせる。
こういった感性が、沢田さんの作品から漂う〈祈り〉にも繋がっているのかもしれない。
この『かたわらに』は、作品はもちろんのこと、イアン・オージャスさんという写真家による、写真の一枚一枚もよかった。余計な意思は削ぎ落とされ、彫刻の佇んでいる様が写し出されている。
