
西島大介
すべてがちょっとずつ優しい世界 2012年
ある雑誌のコーナーで、好きなミュージシャンが、西島大介さんの『すべてがちょっとずつ優しい世界』という漫画をおすすめの作品として挙げていた。
この漫画は、画風や内容が、ちょうど自分の心の温度感と合った。単巻漫画なので読みやすく、寓話的で詩のような静かなトーンが続く。
舞台は、小さな島にある、くらやみ村という小さな村で、妖精のような雰囲気の村人たちが暮らしている。
この世界には、くだもの畑があり、観測所があり、船着場があり、穴ぼこ山がある。穴ぼこ山は、くらやみ村の隣にあり、かつて炭鉱で栄えたものの、今は掘り尽くされ、捨て去られてしまった。

西島大介『すべてがちょっとずつ優しい世界』
くらやみ村は、闇と静寂の村だった。でも、お祭りの日だけは、神様に許された日として、広場に小さな光を灯し、数少ない村人たちが輪になって踊った。
その光以外で、くらやみ村を灯すのは、唯一、夜空にうっすらと見えるオーロラだけだった。
静かな、寂しい、村だった。しかし、そのくらやみ村に、あるとき、遠くの街の人が、「ひかりの木」を植えようと提案してくる。
この提案に対し、最初、村人は断り、その決断に、街の人も納得する。街の人は、「この村はよい村で、私たちが失ったものがある」と言う。
そのくらやみ村が、まもなく大嵐に襲われ、大きな被害を受けることになる。被害を受けた村を、街の人が、色々と助けてくれる。そして、この悲惨な経験ののち、「ひかりの木」を植えることに、村人たちは、誰も反対しなくなった。
しかし、「ひかりの木」を植えたことで、次第に失われていくものがあった。守ってきたものが、剥がれ落ちていくようだった。
苦しみから逃れよう、あるいは、守ろうとして、光に手を伸ばし、その光によって、本当に大切なものが失われてしまうことになる。その切なさが描かれている。
漫画の世界は、淡々とし、誰かを責め立てることもなければ、憎しみもない。誰が悪いわけでもなく、激しい対立もない。
題名にある通り、「すべてがちょっとずつ優しい世界」だ。すべてがちょっとずつ優しく、寂しく、それゆえの救いがある。
