トニ・デムーロ
純粋に綺麗というだけでなく、不思議と感動も覚える。感動の理由を、なかなかうまく言語化はできないものの、星空というよりも、一見、宇宙のどこかに立っているみたいだ。手のひらに星があり、上半身と色で繋がっている。半分星と繋がり、宇宙のなかの星の一つになり、もう半分は、宇宙と色が同じで、人と世界とが二重に溶け込んでいる。
作者は、イタリアのToni Demuroさんという現代のイラストレーターで、作品はインスタやホームページで見ることができる。幻想的なもの、夢のようなもの、こういったちょっとロマンチックで美しいものだけでなく、少し不気味な、シュルレアリスムのような作品も多い。動物、自然、それから月や星など宇宙的な空間がモチーフになっている。若干悪夢めいた意味深な雰囲気の絵もあれば、この星の絵のように、あまりいくつもの要素が盛り込まれていない絵もあり、個人的には、後者のほうが落ち着く。
この作品と同じような雰囲気で、世界の端っこの、コンクリートの崖っぷちみたいな場所で、三日月の上にちょこんと足を載せるようにして座り、少女が本を読んでいる絵もよかった。少女の後ろには猫がいる。少女も猫も、影になっている。月だけがぼんやりと光を放っていた。
それから、夕焼けのような黄色い背景に大きな木が立ち、枝に繋がったブランコに誰かが乗っている絵も、心象風景のような引き込まれる魅力がある。このブランコの様子を見ていると、情景は違うものの、中原中也の詩の『サーカス』に出てくる、揺れるブランコの描写を連想する。ゆあーん、ゆよーん、ゆやゆよん。いつまでもブランコが揺れる夢の世界のようだった。