ヴュイヤール『ベッドにて』

エドゥアール・ヴュイヤール
ベッドにて 1891年

フランスの画家のエドゥアール・ヴュイヤールは、ゴーギャンの教えをもとに発足したナビ派の画家の一人で、日本の浮世絵などの影響も受けている。

ナビ派は、19世紀後半に、モーリス・ドニやボナールらとともに形成された前衛的な芸術集団で、ナビはヘブライ語で「預言者」を意味し、神からの啓示を受け、人々を導く存在としての預言者が由来とされる。

このとき、きっかけとなったゴーギャンの教えとして、次のような言葉が知られている。「これらの木々がどのように見えるかね? 黄色だね。では、黄色で塗りたまえ」「その影は? どちらかと言えば青みがかっているね。それでは君のパレットの中の最も美しい青を画面に置きたまえ」。

写実的に捉える色彩ではなく、心象で捉えて表現する。それは、見えるように描く印象派から、より進んだ「見えるように描く」ということなのかもしれない。

ヴュイヤールも、そんなナビ派の一人で、また親密派アンティミストとも自称している。これは、室内画や身近な生活を題材に、親密な情感溢れる表現で描く傾向を指し、親密派ではヴュイヤールが代表的な画家とされる。

個人的には、印象派の女性画家であるベルト・モリゾや、デンマークの画家のピーダ・イルステズを連想させる言葉のようにも思える。モリゾの場合は、特に室内にこだわっていたわけではないものの、家族や日常の温かさを描いた。

ヴュイヤールの絵のなかでは、『ベッドにて』という作品が一番ほっとして心に残る。

子供なのか、安心して心地良さそうに眠っている。どんな夢を見ているのだろう。寝癖も、布団に顔がちょっと埋まっている様子も可愛く、ベッド自体の包容力も、観ているこちら側まで包まれるような気がしてくる。

ベッドの奥には、十字架の一部が描きこまれている。これは、ヴュイヤールが子供の頃にカトリックの教育を受けていたことに関係しているのではないか、とも言われている。

ただ、そういった背景を知らずとも、どこか深淵さを漂わせた宗教的な静謐さが感じられる。

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